サステナビリティ
コクヨ/ダイバーシティオフィス「HOWS PARK」②自律協働社会の実現に向けた“新しいオフィス”のカタチ
2024.08.29
「独自のサステナブル活動を展開する」企業様からお話しを伺うインタビュー企画。今回は、コクヨ株式会社さんの大阪本社ビル一階にある「HOWS PARK(ハウズパーク)」にお招きいただき、取材&インタビューを行いました。 「HOWS PARK」は、コクヨさんが自律協働社会の実現に向け、「これからの社会に求められるオフィスづくりに先駆けたチャレンジ」として様々な取り組みをしている実証実験型オフィス。その全容について、ワークプレイス事業部スペースソリューション本部・武田雄次さんに詳しく伺いました。
これからの社会に求められるオフィスづくり
―「HOWS PARK(ハウズパーク)」とは、いったいどんなところなのか教えていただけますか?
武田さん:コクヨが掲げる重点課題のひとつに、「Well-beingの向上」があります。これは、社会のバリアをなくして生き生きと働く人を増やそうという共創社会の実現を目指すものです。社内だけでなく社外へのWell-beingの向上も大きな目標にしています。
前回説明させていただいた“コクヨが考えるモノづくりのあるべき姿”「HOWS DESIGN(ハウズデザイン)」もこうした背景の中で生まれたものです。この「HOWS PARK」は、「HOWS DESIGN」を実証実験することもできる共創空間という位置づけになります。
「HOWS PARK」は2023年1月、コクヨの特例子会社「コクヨKハート株式会社」がコクヨ本社への一部移転を機に、同本社一階を多様な人たちが快適に働けるダイバーシティオフィスとして始動しました。対話をベースにした「インクルーシブデザイン」の考え方に基づき、コクヨKハート社員はもちろん、コクヨのファニチャー事業、ステーショナリー事業、ビジネスサプライ流通事業という事業や立場の違う多様なメンバーが一緒に協業を重ね、作り上げたオフィスなんです。このプロジェクトにかかわった延べ人数は、実に200人超えでした(笑)。
視覚に障がいのある方に配慮して室内の色調やデスク回りを配慮、電動車いすに対応した床材や昇降デスク、そのほか多目的トイレやアクセシビリティに配慮をしたスロープ、気持ちをリラックスさせるためのカームダウンエリアなどが設置され、こちらではKハートの一部社員が執務を行うほか、社外の方々とミーティングやワークショップなどを行う際に利用できるようになっています。
とはいっても、まだまだ発展途上。喜びの声もある一方で、失敗したなと後悔する部分も多いです。これからの社会に求められる「インクルーシブなオフィスとは?」「求められる商品とは?」という問いに向き合い、あれこれ試行錯誤しながら皆さんと模索をしているところです。
―具体的にどんな要望があり、どんな形で実現されて、どんな反応があったか教えていただけますか?
武田さん:車いすの方との対話の中で「ハイカウンターに憧れる」という声がありました。車いすの方にとってはハイカウンターに座ることは困難なため誰もが使いやすいカウンターとは何かを検証しました。よくあるストレート形状の天板カウンターを設計していたのですが……。「ストレート形状だと会話の中に入りにくい」「車いすだと寄りにくい」という声をいただいて、サークル形状の天板カウンターを採用しました。また、車いすの方も含めてみんなが使いやすい様に、カウンターの高さにバリエーションをつけました。それによって、目線を合わせて話すのが苦手な方にも喜んでいただけているようですね。
車いすといえば、パントリーのカウンターも下に車いすが入れるスペースを作っています。これまで車いすの方は、身体をひねってコーヒーを淹れるなどしていたとのことで、やってみるとこれがなかなか身体にしんどい。当事者の方は「それが普通」と慣れてしまっていて、あえて要望として挙がってこなかったのですが、対話を進めていく中での気づきはぜひ反映すべきだと感じました。「言っても実現できないだろうとあきらめていた」という表に出てこない要望も数多くあるので、本当に対話は大事ですね。
―失敗事例や、改善したい点についても教えてください。
武田さん:対話やワークショップを通じて空間構築をしましたが、実際に空間が出来てその空間を使用してから気づくこともあります。車いすの方が日々使う設備の配置を、より使いやすく改善したいなと思っています。
例えば、トイレの洗面台に下から手で押すタイプの液体手洗いせっけんを設置しましたが、実際は下半身の力を入れないと下から押す事ができません。なので下肢機能障がいを持った方にとっては使いにくく、今は上から押すタイプの容器を追加しています。
対話を重ねながら、よりリアルな行動観察を時間をかけて行うことが必要だと感じています。
こうした失敗や思い込みも含めて、きちんと反省して次につなげていくしかありませんね(笑)。
―まだまだ発展途上とのことですが、今後「HOWS PARK」はどのように展開されるご予定ですか?
武田さん:「HOWS PARK」始動の背景としては、コクヨが「Well-beingな社会を実現する」という課題を考える中で、Kハート社員を含めた全社ベースの一体感を改めて見つめ直そうという流れがありました。Kハートで働いている障がいを持つ方たちは、本当にWell-beingを感じているのだろうかと。
近年、障がいの有無に関わらずワーカーが主体的に、仕事や職場を選ぶ時代になってきました。働く場が快適かつ魅力的でないと、職場として選んでもらえないんです。障がいを持つ皆さんも、社会にとって非常に魅力的な働き手。取り組みの進んでいる企業は、オフィス環境が魅力的で、働く方々もとても楽しそうに働いている。コクヨを職場として選んでもらうためにも、現在働いている皆さんに満足してもらうためにも、多様な人に受け入れられる新しいオフィスモデルの創出は必須だったんです。
今、コクヨだけでなくさまざまな企業が、こうしたダイバーシティオフィスに興味を持っています。皆さん、今後求められる“新しいオフィス像”を模索しているんだと思います。
今後コクヨでは、この「HOWS PARK」をさらにブラッシュアップしていくとともに、ここで得たプロセスやヒアリングノウハウに関する知識を、提供するサービス「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)オフィス空間構想サービス」を展開していきます。すでに今年4月から運用を開始し、さまざまなお客様から数多くお問い合わせもいただいている状況です。オフィスを利用する人々との対話を通して隠れた課題を可視化、よりよい環境づくりを提案するサービスを通して、「Well-beingな社会実現」に向けたお手伝いができればと思っています。
―武田さん、お忙しい中ありがとうございました。「新しい価値を生む瞬間は、本当に楽しく、やってよかったと感じる」という言葉が印象に残りました。「循環社会への貢献」「Well-beingな社会を実現する」を推進されるコクヨさん。今後の取り組みを楽しみにさせていただきます。
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