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コクヨ/「HOWS DESIGN」によるモノづくりを推進① 対話が生み出す新しい価値とウェルビーングな社会
2024.07.18
「独自のサステナブル活動を展開する」企業さんからお話しを伺うインタビュー企画第3回目。今号でも引き続き、コクヨ株式会社さんをお迎えしてお話しを伺っていきます。 2023年からサステナブル活動を本格化させ、社内外の「Well-being向上」を重点課題として挙げられているコクヨさん。ワークライフバランスを重視した働き方推進や、多様な人と一緒に行うイノベーション創出を通し、Well-beingの向上を目指されています。今号では、その実現に向けたモノづくりの指針「HOWS DESIGN(ハウズデザイン)」について詳しく伺います。ワークプレイス事業部スペースソリューション本部 栗木妙さん、同部 武田雄次さん、どうぞよろしくお願いいたします。
コクヨが考えるモノづくりのあるべき姿
―まず、「HOWS DESIGN(ハウズデザイン)」とはどのような取り組みなのでしょうか?
栗木さん: 「HOWS DESIGN」は、一般にインクルーシブデザインと呼ばれるデザイン手法を、“コクヨが考えるモノづくりのあるべき姿”に定義しなおしたものです。もともとコクヨでは、多様なユーザーの声を取り入れたインクルーシブデザインのモノづくりに挑戦してきましたが、インクルーシブという言葉が広く扱われるようになる中、コクヨの考えるインクルーシブデザインを明確化したいという強い思いから生まれました。コクヨ独自の名称を付けることで、責任を持ってやっていくという覚悟の現れでもあります。といっても、障がいを持つ方たちだけに向けた商品開発ではありません。多様な方たちの声を聞くことで、本当に使いやすい商品を生み出す。「HOWS DESIGN」は、そのための手法、工程ということになります。
ちなみに「HOWS」という言葉は、対話を生むためのキッカケとなる言葉。世の中の多様性に耳を傾け、さまざまな思いを受け取っていきたいという想いから「HOWS DESIGN」というネーミングになりました。
大切なのは、紆余曲折!?
―「HOWS DESIGN」によるモノづくりとは、実際にどのようなプロセスで進むのでしょうか?
栗木さん:「HOWS DESIGN」は、①社会のバリアを見つける、②解決方法のアイディアを検討する、③試作品で検証する、④具体的な商品やサービスで検証する、という4つのフェーズを歩みます。すべての工程において、リードユーザーの方たちと十分な対話を重ね、紆余曲折しながらもしっかり創り上げた商品が、「HOWS DESIGN」商品と呼ばれることになります。
図を見ていただけるとわかるのですが、開発工程にしては道がくねくねしてますよね。これは、メーカーによる一方通行のモノづくりではなく、何度も話し合い、時に行きつ戻りつ、足したり引いたり、悩んだり回り道をしながら丁寧にモノづくりをしていこう、という私たちの意思を反映させているんです。
具体的には、現在はコクヨの特例子会社である「コクヨKハート株式会社」の社員や、社内外の仲間とともに、障がいのある方をはじめとしたさまざまな意見をヒアリングしつつ、商品開発を進めています。
コクヨでは、インクルーシブデザインという考え方が根付く前から多様な意見に耳を傾けてきた自負はあるのですが、「HOWS DESIGN」のモノづくりが従来と決定的に違うところは、リードユーザーの方たちの声を聞くだけでなく、「一緒に作っていく」ことに尽きると思います。単なるレビューをお願いするなどではなく、アイディア出しから試作品の検証、修正点の洗い出し、細かい調整に至るまで、すべてのプロセスに関わってもらっているんです。
広がる「HOWS DESIGN」商品
―実際にどのような「HOWS DESIGN」商品が開発されているのでしょうか?
栗木さん: コクヨは、オフィス家具などを製造するファニチャー事業、文房具を作るステーショナリー事業、オフィス用品の通信販売を行う「カウネット」を運営するビジネスサプライ流通事業があります。それぞれの部門で「HOWS DESIGN」のモノづくりを進めていますが、現状一番進んでいるのがカウネットでの商品開発ですね。色覚特性のある方にも識別しやすいUSBシリーズ、開け方が分かりやすく軽い力でも扱いやすい「取り出しやすい箱」シリーズなどがすでに発売されています。
「HOWS DESIGN」は、2023年に着手したばかりのまだ新しい取り組み。カウネットでは、もともとお客様の声を聞き、改良する取り組みを進めていたため、「HOWS DESIGN」のモノづくりを進めやすい部分がありました。家具では既存商品のリニューアルという形で、官庁舎など向けのカウンターテーブル「VaMoS(バモス)」が「HOWS DESIGN」商品になっています。とはいえ家具と文房具に関しては、どうしても開発に時間がかかります。目標としては、2030年には新商品の50%以上を「HOWS DESIGN」商品にすることを目指して順次投入していくので、今後をご期待いただきたいところですね(笑)。
本当に使いやすい商品を届けたい
―有意義ながら大変な部分も多そうですね。「HOWS DESIGN」を進めるにあたっての難しさ、おもしろさを教えてください。
栗木さん:難しい点については、商品開発に非常に時間がかかる、という点ですね。ワークショップの場を設け、検証、対話を何度も繰り返して商品開発を進めていくので、とにかく時間がかかります(笑)。当然、それを価格として反映させなくてはならないのが難しいところですね。製品としての良さはもちろん、製作の意図や背景、付加価値などについて、「HOWS DESIGN」の価値をお客様に伝えていく工夫は、今後の課題になってくると思います。
面白い点は、とにかく新しい発見が多いところ。まさに日々、目からうろこなんですよ。開発側として、当たり前と思っていたり良かれと思って提案したことが、リードユーザーの方たちにとっては「全然正解じゃない!」ということが本当に多くて驚きます。
例えば、「コクヨKハート株式会社」のオフィスに気持ちを落ち着かせるためのカームダウンエリア設置を進めていた時の話ですが、照明を薄暗く設定したら「暗いと逆に落ち着かない」、横たわれるソファを提案したら「そこまでは不必要」と。照明や椅子だけでなく、ワークスペースやカーテン、コンセントの位置など細かい部分に至るまで、こちらの思い込みや固定概念を覆させられることばかり。モノづくりに、対話は必要不可欠だと痛感する日々です(笑)。
人によってさまざまな「使いやすさ」があるので、もちろん正解は一つではありません。しかし「HOWS DESIGN」によるコミュニケーションを通して、「これまで気づかなかった」「仕方ないと思ってあきらめていた」ユーザーの困りごとを見つけ出し、障がいのあるなしに関わらず多くの方に使いやすいと思っていただける商品を作っていくのは、本当にやりがいのあるお仕事だなと思っています。
―栗木さん、興味深いお話しをありがとうございました。「HOWS DESIGN」のプロセスを通して、これまでにない新しい価値が生まれてくることを楽しみしています。
次号では、「HOWS DESIGN」実証実験の場である「HOWS PARK(ハウズパーク)」(大阪)に突撃取材。様々な取り組みを行う最前線について、詳しく伺っていきたいと思います。
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