サステナビリティ
オカムラ/“環境配慮の波(GREEN WAVE)”を作り出すオフィス家具メーカー②『サーキュラーモデル』に使われるサステナブル素材とは
2024.12.02
株式会社オカムラオフィス環境事業本部 マーケティング本部 ワークプレイス製品部部長の白井秀幸さんにお話しを伺います。 同社は、オフィス家具メーカーとして、働く環境づくりを支援する製品とサービスを展開されている企業。2050年に温室効果ガス排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)実現を目指し、グループ全体での取り組みを強化されています。同社では、「GREEN WAVE」に基づく独自の環境基準に則って製品を作られているほか、環境に配慮した素材を積極的に開発しています。今号では、環境負荷軽減をより意識した『サーキュラーモデル』にも使われるサステナブル素材にフォーカスし、詳しく伺っていきたいと思います。
家具メーカーが独自開発する再生素材とは
―『サーキュラーモデル』製品では、厳選したさまざまなサステナブル素材が使われていますが、独自開発された素材について教えてください。
白井さん:オフィスチェア『Contessa Ⅱ(コンテッサ セコンダ)』サーキュラーモデルなどに、張地として使用しているニット生地「Re:net(リネット)」が独自開発素材の1つですね。「リネット」は、深刻な海洋プラスチックごみの原因のひとつである使用済みの漁網をリサイクルした再生ナイロン「REAMIDE(リアミド)」を糸にしたものを、再生PET糸とともに編み込んでニットにした素材です。以前、こちらのインタビューにも登場された株式会社リファインバースグループさんが使用済みの漁網を回収し、再資源化したペレットを協力会社とオカムラが糸として加工しています。
漁網は丈夫な素材なので、ペレットの状態から糸にするのがとても難しく、製品として完成するまでに約一年半かかりました。これは業界初の快挙で、完成したときにはほかの素材メーカーさんから「とうとうやりましたね」というお言葉をいただきました(笑)。また、漁網は丈夫な特性を持つだけに、椅子の座面に使うには肌あたりが強くなってしまう問題もあり、再生PET糸との配合でも苦労しました。
他にも、チェアやパネルの張地として使用している「Interlock(インターロック)」も自社開発素材。使用済みPETボトルからできた、再生PET糸を組み込んだ生地になっています。
これらの環境配慮素材は、「サーキュラーモデル」に限らず当社の様々な製品のラインナップに採用されています。
限りある資源を無駄にしない
―『サーキュラーモデル』製品には、そのほかどのような再生素材を使われていますか?
白井さん:オフィスチェアのスタンダードライン『Potam(ポータム)』のサーキュラーモデルでは、リサイクル脚を使用しています。これは、使用済みオフィスチェアの樹脂脚をリサイクル樹脂に再生し、その一部を使用して、再び樹脂脚へと生まれ変わらせる仕組み。使用済みの椅子を回収して選別し、分解、分別、洗浄、粉砕、リペレット化を経て、再生させています。脚の部分は、樹脂の使用量が一番多いパーツなので、脚部分の再製品化は積極的に進めており、ほかのシリーズでも順次拡大していく予定です。
また、『コンテッサ セコンダ』サーキュラーモデルのシートクッション部分には、リサイクル可能なポリエチレン製クッション材「E‐LOOP(イーループ)」を採用しています。従来のウレタンクッションは、使用後にリサイクルができず廃棄するしかありませんでしたが、「E‐LOOP」はポリエチレン製なので100%リサイクルが可能。この素材は素材メーカーさんのブランドですが、オカムラでは荷重を考慮し、樹脂の粗密を三次元方向で変化させて、より機能的に形成したクッションを協力会社と共同開発し、使用しています。
その他、使用したあと肥料として活用できる「CircuLeather(サーキュレザー)」、フレームとインナーシェル部分などに、使用済みの漁網のリサイクル素材「リアミド」を使用するなど、資源循環やCO2排出量削減を重視した再生・リサイクル素材を厳選しています。
環境と機能を両立しうる素材を模索
―今後、注目していきたい新素材などはありますか?
白井さん:森林整備の際に発生した不要な樹木や切り捨て材のうち未使用の材を指す「未利用材」という素材があり、積極的に活用する取り組みを進めています。未利用材の活用は、森林整備に寄与するとともに、災害時の流木などによる被害の防止など、社会課題の解決にもつながります。以前、「未利用材」を学校の家具として使うプロジェクトがありました。地元にある未利用材を学校で使うという試みは、教育的にも高評価でした。ただ、木材製品は加工を重ねると割高になりがち。価格面で難航しているところもあります(笑)。
あとは、バイオマスプラスチックでしょうか。オカムラでは、環境省関連プロジェクトの成果として、サトウキビの非可食部分から作られたバイオプラスチック素材の家具『Up-Ring(アップリング)』シリーズも発表しています。サトウキビは、生育の過程でCO2を吸収するため、総CO2排出量が削減可能。しかもこのシリーズは、3Dプリンターで作るため、金型が不要、無駄な材料が不要、使用電力削減などメリットの多い、ユニークなものになっています。
日本には、手つかずになっている環境素材がたくさんあります。これを効率よく製品化する糸口を見つけていけたらと、日々模索しているところですね。
その一方で、オカムラの家具の圧倒的主流は、デスクやキャビネット、ロッカーなどに多く使われているスチール。鉄は作る時に多大なエネルギーが掛かりますが、鉄鋼メーカーの技術進歩は目覚ましく、改善策がどんどんとられています。一方、鉄を溶かす際のエネルギーは大きくないうえに、何度でも繰り返し使えます。循環型素材という意味では、鉄の再利用もひとつの答えかもしれません。
迷いながら、一つ一つ丁寧に検証を重ね、環境と機能を両立しうる製品を作り出していきたいと思っています。
―白井さんありがとうございました。
家具メーカーさんでありながら、独自素材の開発にも熱心に取り組まれていて驚きました。
「健康的にはたらく場」を提案することを重視した製品・サービスの開発に尽力しているオカムラさん。その本気が伝わってくるインタビューでした。私たちにもなじみ深いオフィス家具が、環境変化を背景にどのように変容していくのか、楽しみにしていきたいと思います。
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